あの島に移り住むまで

〜「好きな本から」を書きたくてはじめたけどいろいろ書いちゃってるブログです〜

アイドルよりもアーティストのほうが上

 

そう思う自分が「かっこいい」と思っていた頃があった。

 

「アイドルじゃなくて、アーティストになりたい」

「アイドルなんて」

 

そんなこと、アイドルにでもアーティストにでもなってから言えよって話なのだけど、そんなことすら10代の頃の私は分かってなかった。志くらい周りと同じくらいに立っていなくてはいけない!!そう考えて「アイドルになりたいわけじゃない」と言い張った。理由は、チームメイトたちが口を揃えたように言っていたからだ。会社から目をつけられるような子たちはビジョンにそういう強いこだわりを持っている子ばかりだった。だから、言い続けた。

 

「私、アイドルになりたいわけじゃないんです。歌手になりたいんです」

 

最近、そんな自分と似ているなあと思うような本を読んだ。東畑開人さん居るのはつらいよという本。そこに、こんな言葉が書かれている。

 

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

ケアよりもセラピーのほうが上だ。僕にはそういう意識があったのだ。

 

「あっ」 と思った。

 

この部分だけを10回は繰り返して読んだ。読み返すたび3秒遅れて浮かんでくる。

 

ケアよりもセラピーの方が上だ。

 (アイドルよりもアーティストのほうが上だ。)

 

ケアよりもセラピーの方が上だ。

 (アイドルよりもアーティストのほうが上だ。)

 

ケアよりもセラピーの方が上だ。

 (アイドルよりもアーティストのほうが上だ。)

  

間違いなく、僕には(私には)そういう意識があった。

 

考えたこともない。「ケアよりもセラピーが上だ」なんてこと。どちらが上かなんて分かるはずもないし、どちらが上かを本当に考えなければいけないかについても、正直分からない。ケアもセラピーも必要だから存在しているのだろうし、私はそれに触れることはあまりしたくない。

だけど、「アイドルよりもアーティストが上」ということは考えたことがある。今思えば“馬鹿”だったということがわかるけど、当時は本気でそう考えようとしていた。「アイドルよりもアーティストが上」。結局これだって上も下もない。上も下も言えない。今ならわかる。アイドルであってもアーティストであっても、そうなったことが“まず”すごいのだから、上も下もあるわけがない。「なってから言え」でしかないこと。アイドルにもアーティストに負けないエンターテイメントを作る人がいる。アーティストにも、アイドルに負けないエンターテイメントを提供する人がいる。どっちが上でどっちが下かということはないって「こだわり」から離れてみて分かった。

 

アイドルであれ、アーティストであれ、それ以外の人ができないことを目の前で成し遂げているのが、アイドルでアーティスト。

 

「アイドルになりたいわけじゃない」

「アーティストになりたい」

 

そんな考えは馬鹿だ。私は大馬鹿者だった。

 

せめて、本気でそう思っているならよかった。でもそうでもなかった。正直なんでもよかった。人前で歌を歌って踊ることができたらそれでよかったから。だから、馬鹿だったなと思う。「それで生きていけさえすれば何だっていい」のなら、そんなこだわり早くに捨ててしまえばよかったのだ。

 

歌の世界でもダンスの世界でもインストラクターたちは「入口はなんでもいい」という。「入口はなんでもいいからとにかくチャンスを掴みに行きなさい」とよく口にする。それでもそこにいるような(スクールに通う)人たちには中々耳に届かない。歌を習って、踊りを習って、オーディションに受かってデビューする。そういう王道をイメージしているから。そういう人たとが集まる場所がスクールだから。仕方のないことでもある。

 

ただやっぱりそうだった。

その中でもいち早く抜けて夢を叶えていく人はさっさと出ていく。さっさと入口を見つけて、さっさと(こだわりから)抜け出ていけるひとだった。顔立ちが綺麗だとか、華があるだとか、歌が上手いだとかではなく、こだわりを“さっさと”捨てていける人から叶えていく。

 

例えば、芸人という道からテレビに出て活躍した人。曲も出した。あとは、みんな受けたがらなかったスポーツのチアグループからデビューの道を作った子もいた。その子は今歌って生活している。

 

入り口がなんであれ「歌って生きていけること」のほうが大事なのだから、その賢さが正解だった。「あれよりもこっちのほうが」とかってどうでもいいこだわりはささっと捨てられるくらいでいい。 

 

「あれよりも、これの方が上」だとか、「あそこよりもここがいい」だとかって、入口を小さくする必要はない。もっとそのハードルが低ければ、緩ければ、もっともっと遠くをみれたかもしれないし、もっともっと早く諦めがついたかもしれなかったから。もっともっと気持ちよく踏ん切れたかもしれないから。

 

だから、言いたい。

 

会えるなら。

 

とりあえず入ってみればいいんだよって。とりあえず、入口を自分専用にするところまで頑張ってみればいいのって。入るか入らないかは、そこからだって選べるんだから!って。

 

こだわりなんてなくたっていいんだよ。ゴールさえはっきりしていれば。

 

アーティストであれ、アイドルであれ、女優であれ、芸人であれ、下手であれ、上手であれ、「したかったことをしている未来」を手に入れることが重要なのだから。

 

上だとか下だとか、王道だとか、邪道だとか、そんなものはさっさと捨てしまっていい。

 

譲れないもの、崩せないもの。そのこだわりは間違いなく大事だけど、譲れるもの、崩せるものは、じゃんじゃん捨てられたほうがよかった。

  

順番なんてどうでもいい、入り口なんてどうでもいいんだから。

 

何度も言うけれど「ほしい未来が手に入っている」ことほうが大事なんだから。

 

「アイドルになりたいわけじゃない、アーティストになりたい」

 

そう思い込んでた頃の自分に言いに行ってあげたい。

 

そんなの馬鹿だよって。

 

さっさと捨てちゃいな!って。

 

そう思った『 居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 』を読んで。