あの島に移り住むまで

〜「好きな本から」を書きたくてはじめたけどいろいろ書いちゃってるブログです〜

人は変わる、だから、約束も変わる。

 

「毎年、正月は帰って来れるから来年も行こう」

 

.........そう言った友達が帰ってきたことは1度もなかった。中学生か高校生の頃から始まった年越しすぐに行く初詣。恒例行事。年を越して家族に挨拶をした後、自転車に乗って向かう。お参りをして御神籤をひき、甘酒をもらって、少ししゃべって、解散。ただ、それだけ。

 

大学を卒業後、彼女は関東の方に上京することになった。

 

その年の元旦

「今年で最後やな」

そう私は言った。そしたら彼女はこう返した。

「正月は休みやから、戻ってくる。来年も行こう」

 

想像してなかった返答にワンジャンプするくらい喜んだ覚えがある。

 

「そうなん!やったあ!!」

 

だけど実際は、1度も帰ってこなかった。元の予定通り、あの年が最後になった。寒い中自転車を漕いで初詣に行くなんてことはもうない。別にいい。寒い中、行く体力もなくなっている。ラインを1つ交換し合うくらいでいい。寒い冬の夜に行く必要なんて特にない。ただ、虚しさが毎年スッと一瞬蘇る。

 

「あの言葉はなんだったのか」

 

そんなことを、『君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』を読みながら思い出した。

 

 

君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も

 

「なかなかできない」と嘆いていた彼女から「できた」とメールが来た時、人はたった三文字でこんなに喜べるのかと思うほど、ここ数年で一番喜んだ。喜んだ、と言っても、ちょっとジャンプしたくらいだけど。だけど、嬉しいのと同時に少しだけ悲しくて、誰かに泣きつきたくもなった。「うちらどうせ結婚もせえへんやろうし、歳とったら一緒の老人ホームに入ろうや」という約束を、言葉通り、「約束」として捉えていたからだ。

 

 

私も、彼女に「彼氏ができた」と報告をもらったときは嬉しかった。それこそ、本当にジャンプしたくらい。学生の頃は、中々思い通りに(恋愛が)うまくいかないはなしを聞くことが多かった。だけど、可愛いし優しい彼女は、周りが大人になればすぐにできると思っていたので、特別、その報告に驚くこともなかった。ただ、正直なところ、少しだけ嬉しさと反対のものを感じた。上(引用)にあるように、嬉しいのと同時に少しだけ寂しくて悲しかった。

 

その寂しさの予想通り、正月を迎えた。

 

人は少しずつ変わっていく。仕事に合わせて、恋人に合わせて、家族に合わせて、環境に合わせて。それは、みんな変わっていく。誰かだけ変わることもない。誰かだけ変わらないこともない。みんな変わって、みんな変わらない。だから、彼女がどうとか、私がどうとかって話ではない。ただ、ちゃんとみんな変わっていくのだ。今までのように合わなくなってくることももちろんあるし、今までとはちがうようになっていく。当たり前のように。仕方のないことだ。人は変わる。

 

だけど、やっぱり寂しいのだ。それを実感する方は。

 

ただ、一年の間に大きく大事な優先順位が変わってしまった。それだけのこと。だけど“それ”が、一年の間にふと間に入ってきた男だった事実。少しだけ虚しかった。負けた。全てに負けた。そう思ってしまった自分に、こう書いている自分に、そして、友達に、その彼氏に。私以外の全ての人間に。今思えば、ただの嫉妬でしかなかった。男にか、友達にかは分からない。多分、そのどちらもだったのだと思う。

 

「約束」まではいかない「約束」が、私だけのものであったことを実感して「虚しく」かった。

  

人は変わる。私も、彼女も変わった。私も、私以外も、人は簡単に変わっていく。仕方ない。そういう事実と上手く付き合っていくのが、大人になっていくということなのかもしれない。

 

おめでたいことに、 今年に入ってその友達は結婚した。その彼とだ。運命ってこうなのだ。運命ってそうやってできているのだ。あの年、一緒に行く初詣が最後だったこと。彼女がその会社を就職先に選んだこと。上京したこと。彼が彼女の人生の優先順位に入ったこと。私と彼女がこうしてお互い離れて大人になったこと。

 

人生なんてどうなるのかわからないものだなあと思う。私がこうなっていることも、彼女がこうなっていることも、想像できなくはなかったが、想像してはいなかった。

 

寂しくて面白い。悔しくて面白い。虚しくて面白い。 悲しくて面白い。

 

「約束」もそういうものだ。

 

もしかすると、「約束」は自分とするためのものなのかもしれない。人とする「約束」なんて、どちらかが忘れてしまえばないのと同じなのだから。どちらかが破ってしまえばなくなってしまうのなのだから。

 

寂しくて嬉しくて、悔しくて大好きで、思い出す。

 

「正月は休みやから、戻ってくる。来年も行こう」

 

手袋を口元に当てながらそういった数年前の友達の姿を

 

君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』という本から。