あの島に移り住むまで

〜「好きな本から」を書きたくてはじめたけどいろいろ書いちゃってるブログです〜

パスワードなんて必要ない

初めて携帯を持たせてもらったのは、小学四年生の頃だった。理由は入院生活をしていたため。看護婦さんやお医者さんに何か言えないことがあったとき、どうしても寂しくなってしまったとき、そんな「もしも」のために持たされたのが最初だった。

 

なぜこんな話を始めたのかといえば、最近読んだ『朝が来る』という本にあった文章に思い出したことがあったから。そういえば私も言われたことがあったなあと思い出した。

  


 

朝が来る (文春文庫)

その頃もう巧と付き合い始めていたひかりは、姉に倣ってパスワードを設定した。するとある日、涼しい顔をした父から、「お姉ちゃんはパスワード設定してるみたいだけど、お前もしているのか?」と精一杯平穏を装った声で聞かれ、「してるよ」と答えると「なんで」と聞かれた。「なんで。別にそんなことしなくても、誰もみないじゃないか」という説得は、あまりにも矛盾していてぞっとした。これで中学生の娘に本当に通用すると思っているのだろうか。

 

ひかりという14歳の女の子がお姉ちゃんにからこう言われる。「あの人たち、私の誕生日とかでパスワード試したみたい。3回間違えてしばらく開かなくなってた」と。そして、ひかりもパスワードをつけるようになった。父親は言う。「お姉ちゃんはパスワード設定してるみたいだけど、お前もしてるのか?」

 


 

このページを読んだとき、身に覚えのある景色だなと思った。

 

知らない間にパスワードを試されて携帯が開かなくなってたなんてことはなかったけれど、同じようなことを言われたことがあった。小学生の頃にはかけてなかったパスワードを、中学生に上がってかけるようになったとき、「なんで」と言われた。「別に」と答えたら「誰も見いひんねんからいいやん」と言われたけれど、誰も見ないなら別につけてたっていいでしょ、という言い分で外さなかった。

 

正直、外してたら見られてたと思う。

 

だって見てたもん。留守中に勝手に部屋に入ったり、知らない間にパソコンの中見てたりってしてたもん。一時期日記帳も見られていた気がしてわざわざ隠してたもん。別にいいけど!!何を書いてた頃を見られてたのだろう〜って考えるときだけちょっとこわい(笑)

  

涼しい顔をした父から、「お姉ちゃんはパスワード設定してるみたいだけど、お前もしているのか?」と精一杯平穏を装った声で聞かれ、「してるよ」と答えると「なんで」と聞かれた。「なんで。別にそんなことしなくても、誰もみないじゃないか」という説得は、あまりにも矛盾していてぞっとした。

 

本当にその通り。

涼しい顔をして、なんてことないような声で、矛盾したこと言う。当然のように。

 

ひかりと同じくらいの年の頃、みてた大人は大半がそうだったような気もする。そう聞こえた。そう見えてた。

 

今になってみれば、そうなる大人側の気持ちもわからないではない。というか、分かる気がする。一番危うい時期に「自由」過ぎるのは危険だと思っちゃうから。行動も精神もあやうくうつって見えるから。「こわさ」を知らない恐さ。「こわさ」を分かってない「恐さ」。軽い気持ちでSNSに載せてニュースになってる人を目にするたび思う。

 

買い与えたその中で、手に隠してるその中で、何をしてるのか。

 

そりゃ、心配にもなるだろうなと。

 

それでも嫌なものは嫌で。不信に思うのは思う。

 

「誰も見ないんだからいいじゃない」だなんて、やっぱりどう考えても矛盾している。私も思う。

 

ちなみに、携帯のパスワード問題って、親から離れてもある。例えば、付き合ってる人との間で。夫婦間で。友達間でもあるかな??「やましいことがないならパスは教えられるでしょ」問題。やましいことがなくたって、全部を知っていなくてもいいでしょ。と、私は思うけれど、これに関して答えを出すのは無理だと分かってる。「ならいいじゃん」と言う人の見解も、「でも見せたくない」と言う人の見解も、終わりがなくて、正しいから。どうでもよくて、どうでもよくないから。結局どれも正しくはないから。

 

「『携帯をみせて』と相手に言わせてしまわないようにすること」

 

それ一択。お互いに。それ一択。

 

『人の携帯なんて見るもんでも見せるもんでもない』

 

出来ればずっと

 

心の底からそう信じてる自分のままでいたい。